レポート|写真集『3.11キヲクのキロク』出版記念トークショー

EVENT / 2012.04.23 posted

3月26日(月)、同日からスタートしたパネル展示のオープニングイベントとして、写真集『3.11キヲクのキロク~市民が撮った3.11大震災記憶の記録~』の出版を記念したトークショーがKREI SALONにて開催されました。

第1部のスピーカーは、NPO20世紀アーカイブ仙台副理事である佐藤正実さんと、元co-labメンバーの片岡理恵さん(文章家・編集者/BORIS代表)。

佐藤さんがトークのまず冒頭に映し出したのは、何気ない食卓の風景を切り取った、昭和時代のモノクロのスナップ写真でした。撮影地は仙台だそうですが、その写真が特定の場所に限定されない、当時どこにでもあった市民の暮らしの集合的な記憶として思い起こされるように、今回の震災写真も、現代の市民が送らなければならない震災後の生活を、被災した地域だけでなく、どの都市にも当てはまるイメージとして残したい、という思いで呼びかけられたそうです。

Twitterで画像募集の告知が始まったのが、3月22日。その後1週間で約300枚の写真が集まり、4月4日には、約1300枚がアップされたホームページ「『3.11』市民が撮った震災記録」が立ち上げられました(現在では約1万8,000点が収集されています)。これほどスピーディーに写真が収集・公開されたのは、阪神大震災のケースでは、震災から5年後の2000年に写真の収集が開始されたため、いつ、誰が、どこで撮影したのか分からないものが多かった、という教訓があるからだそうです。また高性能なデジタルカメラやカメラ付携帯の普及により、誰でも自分の身近な震災体験を記録し、共有できるようになった今日の機材やメディアの進化も、迅速なアーカイブ化を可能にした要因でした。

トークでは、計20点ほどの写真を映しながら、それぞれが物語る震災の経験や、撮影者の方々にヒアリングされたエピソード、また避難生活のヒントや減災のための日頃の備え等が紹介されました。食事、買い物、移動手段等、生活に直結する側面を写した写真は、メディアによる報道等とは異なる、暮らしに根ざした角度から、震災に対する個々人のリアリティを投げかけています。例えば、片岡さんと共に、311photosを設立されたtakdesign川口貴弘さんデザインのDMにも使用されている一枚(※上画像)。この印象的な写真は、撮影者の方が仲間の祖母宅で知人たちと共同生活を始めた震災直後に撮影されたものです。余震の不安のなか、他人同士が支え合って円い食卓を囲む安堵の一瞬を写していますが、同時に、画面左手の男性がカメラに向ける眼差しはまるで、写真というフレームの外側にいる私たちも、テレビの向こうで行われている国の記者会見と同じように、決してこの食卓につく当事者ではないということを暗示しているかのようです。

一方で、撮影された背景を知らなければ、一見して被災地で撮影された写真とは気付かないような作品もありました。画像左の写真は、阪神大震災で亡くなった小学生はるかちゃんのひまわりの種を受け継いでいる「はるかのひまわり」が、仮設住宅の一角で花を咲かせたシーン。また画像右の写真は、震災後、ひとりの小学生が発見したアゲハ蝶のさなぎが羽化し、ちょうど飛び立ってゆく場面です。どちらのスナップも、お二人の解説を伺ってはじめて、被災地の方々にとっての希望の象徴を映し出していることが分かりました。

これらは、写真集の巻末に掲載されている「3.11を文字で残す-震災記録写真提供者の『3.11』体験記録」のために、片岡さんが51名の画像提供者の方々を取材する中で聞きとられたエピソードです。一連のインタヴューにあたって、片岡さんは「被災者」というバイアスをかけずに、ありのままの情報を残そうと心掛けられたそうです。後世へ一次情報を正しく継承し、世代や地域差による風化を防ごうとすることこそ、震災の教訓を活かし、将来の減災につながるからです。写真集では、こうした生の声を残したテキストも写真と並んで貴重なアーカイブを形成しています。最後に、佐藤さんから今後のご活動の展望をお話しいただき、トーク第1部は締めくくられました。

続いて第2部では、宮城を拠点に活動されているNPO法人杜の伝言板ゆるるの代表理事である大久保朝江さんから、NPOのご活動内容と、震災当時の地元NPOの支援活動などを中心に、被災地の状況をお話いただきました。

杜の伝言板ゆるるは、NPOやボランティア団体の活動しやすい環境づくりのプラットフォームとして、情報の収集と提供を中心に様々な支援活動をされています。今回の震災をうけて、ゆるるでは、日頃のネットワークを活かして宮城を中心とした地元NPOの活動状況調査を行われたそうです。勿論、県外からも多数のボランティアや支援が寄せられていましたが、これからの復興の中心となる地元の人々と長期的に関わってゆく県内のNPOも活発に動いているという事実を伝えようと考えられ、ウェブサイト「復興ingみやぎ」やブログ、月刊誌「杜の伝言板ゆるる」等でとりまとめた情報の発信を始められました。

トークの中で、様々な地元NPOの取り組みをご紹介下さいましたが、震災によってNPO自体が被害を受けたケースも少なくないそうです。そのようなNPOが活動を再開・継続できるよう、「復興みやぎ」という募金サイトが立ち上げられました。ここでは、寄付者が支援したい団体を選び、被災したNPOに直接寄付ができる仕組みとなっています。

第2部の最後に大久保さんが仰っていたのは、「復興はまだまだ始まったばかり」。今回のお話で、震災から1年が過ぎた今も多くの支援が必要とされていることを改めて知ると同時に、しかしその原動力として、地元のNPOやボランティア団体が着実に活動し、復興へポジティブな歩みを進めていることを教えていただきました。

トーク終了後は、「3.11photos」Starting Upレセプションパーティーが行われ、普段は仙台でご活動されている佐藤さん、大久保さんのお二方と参加者の方々が直接交流することのできる有意義な機会となりました。

3.11photosの主催で開かれたKREIでのトークショーとパネル展示。被災地の復興支援のために、東京をベースとしながらも取り組めることを、まさに実践して示して下さったイベントでした。片岡さん、川口さん、大変貴重な機会をありがとうございました!


「3.11キヲクのキロク~市民が撮った3.11大震災記憶の記録~」
NPO20世紀アーカイブ仙台発行 2,100円
全国のジュンク堂、アマゾンでご購入いただけます。

[コミュニティ・マネージャー:橋場]