レポート|「建築・不動産の異端児二人が語る―新しいプロジェクト・ビジネスのつくり方」

EVENT / 2012.07.17 posted

去る5月21日(月)、彰国社より刊行された広瀬郁さんの著書「建築プロデュース学入門─おカネの仕組みとヒトを動かす企画」の発売記念イベントとして、「建築・不動産の異端児二人が語る―新しいプロジェクト・ビジネスのつくり方」と題したトークイベントがKREI SALONにて開催されました。

登壇者は、著者である広瀬郁さん(株式会社トーン アンド マター代表)と「東京R不動産」ディレクターの林厚見さん(株式会社スピーク共同代表)。建築・不動産のプロデュースの領域で第一線を走り続けているお二方の対談とあって、沢山の来場者で会場は満員となりました。

林さんのお仕事の中でもとりわけ広く知られているのは、個性ある物件をセレクトした「東京R不動産」。現在は東京以外のエリアにも展開され、また「R不動産toolbox」では、内装を自分でカスタマイズするための様々なアイデアやツールが紹介されています。愛着の湧く住まいに出会い、その空間をより人間的で楽しいものへと変えてゆけるような仕組みづくりをされている林さん。近年は、伊豆諸島・新島の地域再生プロジェクトにも取り組まれるなど、住宅からまちづくりまで一層お仕事の幅を広げられています。

広瀬さんが手掛けられた代表的な物件といえば、目黒通り沿いに位置するホテルCLASKA。個性的な客室の空間デザインに様々なデザイナーを起用し、築30年の廃業したホテルをリノベーションしたこのプロジェクトは、プロデュースというお仕事を本格的に始動する転機となったそうです。このほか、上海の洋館のリノベーション(diage)や上海万博のパビリオン(Abilia)といった中国でのプロジェクト、またエステサロン(ecura)や国産のイグサを有効活用した「TATAMO!」、地方都市の街づくりプログラムへの関わりなど国内のプロジェクトについてもお話し下さいました。

建築設計をバックグラウンドとしつつ、経営コンサルティングのキャリアを積み、現在のお仕事に到達されたお二人。後半では幾つかのテーマをもとにフリートークが交わされ、様々な経験談やご見識を伺うことができました。

なかでも印象的だったのは、同潤会代官山アパートについてのお話です。広瀬さんは学生時代、このアパートを卒業論文の研究対象とされ、当初は再開発による取り壊しには強い抵抗感があったそうです。ところが調査を進める中で、アパートの住民の方から、雨漏りや耐震性などの老朽化による現実的な問題を聞いたことで、そこへ実際に住み続けることの困難さが分かり、すぐに再開発を歓迎する考え方に変わりました。しかし、新築された建物を見て、果たしてこれで前よりも良くなったのか、そこにはハードとしての建物のデザインだけでは解決できない問題が横たわっているのではないか、と考え直し、経営やお金を動かす仕組みを学ぶ方向へと舵をきったのだそうです。また、林さんが経営コンサルティングに進まれたのも、なぜ日本の街並や景観が均質化していってしまうのか?という、同様の疑問に立脚していたそうです。

お二人とも、経営コンサル時代に、様々な知恵やノウハウをもつメーカーの方々と共に働くことができた経験は大きかったとのこと。建築や不動産のフィールドに戻られてからもその経験を生かし、デザイン面だけを見るのでなく、しばしば敬遠されがちな経営やお金の話に面と向かい、きちんと採算性のあるプロジェクトにしてゆくことで、結果的に、建物自体も長く使われ、継続性のあるものになると仰っていました。

そのようなプロデューサー目線で見る建築の面白さとは、デザインのかたちそのものよりも、「事業としてのデザイン」が成功しているかどうか。そして、面白いアイデアが、事業のスキームや社会的なインパクト、ユーザーにとっての豊かさなどの面から経済的に最適化されているかどうか、にあるそうです。

まだまだ話は尽きないといった雰囲気の中、最後にお二人の今後取り組みたいプロジェクトについてお話いただき、トークは盛況のうちに閉幕しました。

広瀬さんのご著書は、「おカネの仕組み」と「ヒトを動かす企画」の2部構成となっており、それぞれ実際のプロジェクト推進に必要な知識やスキルを講義形式で学ぶことができます。入門書として初学者にも分かりやすく、かつ広瀬さんの実践的なノウハウが詰まった充実の一冊ですので、是非お手に取ってみて下さい。


「建築プロデュース学入門─おカネの仕組みとヒトを動かす企画」
広瀬郁 著
定価2,000円(本体1,905円)
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[コミュニティ・マネージャー:橋場]